労働組合ってなあに?
労働組合は、労働者、つまり働く人たちが、労働条件の維持・改善、社会的地位の向上などを図るために、自分たち働く者の立場で考え、行動するために自主的に集まり、要求の実現をはかるという共通の目的をもってつくられ組織されています。一人では解決できないことでも、みんなで力を合わせれば実現できることがたくさんあります。
日々の仕事の中で、賃金(給与)や諸手当、労働時間や休暇、また職場環境などで疑問に感じたり、改善してほしいことがいろいろと出てくると思います。そんなときに、一人ひとりがバラバラに疑問や要望を主張しても、使用者側と対等の関係で交渉をしていくことは、大変困難なことです。それに、一人ひとりが自分勝手なことを言っていては、解決につながっていきません。
そのため、労働組合はみなさんの『声』と『力』を集め、組合員の代表として、使用者側と団体交渉や労使協議などで対等に話し合いをし、労使(労働組合と使用者側)で知恵を出し合いながら問題を解決していくのです。
労働組合をつくり、私たちの労働条件等について使用者側と交渉することは、憲法(日本国憲法第28条)で保障されています。組合活動は、民主主義の下に行われ、問題は民主的な討議の中で決定されます。みなさんから選ばれた代表者が運営し、みなさんも参加することによって活動は成り立っているのです。「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう。」と組合の活動に参加しないと、一部の人たちの意見だけが反映され、それが全体の意見となってしまうこともあり得るのです。
ですから、もっと労働組合を知り、そして積極的に参加してください。それが大切なことなのです。
組合員の権利と義務
【権利】
① | 労働条件などで疑問に思うことや不安、不満に思うことがあれば、組合に相談することができます。 |
② | 組合の集会や会議に出席して、組合の方針などについて自由に意見を述べることができます。 |
③ | 必要があると思ったときには、会議の開催を要求できます。 |
④ | 代議員や中央委員に選出されると、大会や中央委員会での議決に参加できます。 |
⑤ | 組合役員、代議員、中央委員の選挙権、被選挙権があります。また、組合役員、中央委員の改選要求権があります。 |
⑥ | 組合費がどのように使われるのかを知ることができます。 |
etc |
【義務】
① | 規約・規程に従い、組合員としてみんなと団結する。 |
② | 組合の会議に出席し、決議に参加する。 |
③ | 組合で決定されたことを尊重し、全面的に協力する。 |
④ | 組合費を納める。 |
etc |
労働組合がなかったら
皆さんは「労働組合」にどの様なイメージを持っているのでしょうか。
中には、毎日組合事務所に顔を出している人もいるかもしれません。あるいは、毎月組合費を払っているのに何をやっているのかよくわからない、という人もいるかもしれません。でも、労働組合もあなたから組合費を払ってもらっているだけのことはしようとしているのです。
その証拠に労働組合がなく、私たちがバラバラだった場合を考えてみてください。例えば、一人ひとりの賃金に何の基準もなく、使用者が思うがままに決めることができるとしたらどうでしょうか。私たちは、賃金を上げてもらったり、首をきられないようにするために、いつも使用者の顔色をうかがったり、気に入られるように必要以上に働かなければならなくなるかも知れません。
現実には、労働組合がなくても、極端に労働条件が悪いところは少ないし、いやならば、他の会社で働けば良いかも知れません。
しかし、これは労働組合に加入している人が社会の中に一定の割合で存在しており、労働組合が、労働基準法をはじめ、私たちが働きやすい制度をつくっていたり、賃金や労働条件で一定の社会的基準をつくっているからなのです。
そもそも組合の基本って何?
労働組合の基本の一つは、私たちが協力しあい、賃金や労働条件を守り向上させていくことです。
労働組合は、私たちの職場での要求を実現するために使用者と交渉を行います。労働組合と使用者との交渉を団体交渉(団交)と言います。
団交の第一歩は使用者に労働組合の存在を認めさせ、賃金・労働条件などは必ず労働組合と交渉して決めることを約束させ、組合事務所の提供や組合活動を保障させることです。
続いて、労働組合は、賃金・労働条件など、私たちが働いていく上での要求を話し合い、要求書として使用者に提出します。
要求書を提出し、使用者の回答を求めて団交が開始されます。団交の場では私たちと使用者が対等に話し合い、合意し、文書でそれを確認します。
団交では、狭い意味での賃金・労働条件だけでなく、仕事に関わるあらゆることを話し合い、改善させることが可能ですが、使用者はできる限り団交の内容を制限しようとしますから、労働組合はそれを許さず、一切の労働条件の変更について、事前に話し合うことを約束させなくてはなりません(事前協議制)。これが守られなければ、使用者は一方的に労働条件を変えることができるわけで、労働組合の存在それ自体が問われます。
労働組合は使用者と団交し、労働協約を締結する権利があり、使用者は正当な理由なく団交を拒むことはできません。これを団体交渉権、労働協約締結権といい、労働組合法に定められています。
私たちの代表が団交を行っているとき、私たちはそれを応援する行動を行います。つまり、使用者にその要求が組合員の総意に基づくものであり、正当な理由なく拒否すればストライキ等の団体行動を取らざるを得ないという意思表示です。
団体行動には職場集会、座り込み、要求ワッペンの着用など様々なものがありますが、ストライキはその最高の形態です。私たちは、一定の賃金・労働条件以下では働かない自由を保障されており、使用者が正当な理由なく、私たちの要求を拒否した場合、私たちはストライキという形で一斉に労働力の提供を拒否できるのです。
公務員にストライキ権がないのはなんでだろう?
労働者には、人間らしい労働と生活を実現し、守っていくために必要な、要求獲得のために団体行動をする権利が憲法28条で保障されています。この権利を労働基本権、または労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)と呼び、労働者の基本的権利として定められています。
公務員労働者も敗戦直後は、労働組合法(労組法)の適用対象にあり、労働基本権が認められていました。ところが1948年アメリカの占領政策が反動化し、公務員労働者のストライキ権を一律に奪う政令201号が出され、私たちの労働基本権は著しく制約されることになりました。多くの欧米先進国では、公務員労働者にも当然のこととして、労働基本権が保障されています。
団結権とは・・・・・・
労働組合をつくる権利・加入する権利をいい、ILO87号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)では、労働者が自己の利益を守るための基本的権利とされ、国際労働基準の中でも特別な地位を占めています。公営企業(公企)、現業、県立病院機構及び県立療育機構職員は、労組法上の労働組合を結成することができます。しかし、労組法が適用されない非現業職員の労働組合は地方公務員法(地公法)上「職員団体」と呼ばれて、登録制度など労働組合としていくつかの制約があります。これらの労働組合や登録職員団体には便宜供与がなされ、役員の在籍専従の許可(同1人につき7年)を得ることなどもできます。(非現業の職員団体と、現業の労働組合とが一つの団体を作ると混合組合と呼ばれます。)
なお、消防職員は、警察職員と同様に団結権が禁止されていますが、自治労の長い運動の結果、1996年10月より消防本部ごとに職員参加による、消防長に勤務条件の改善などについて意見を述べる「消防職員委員会」制度が導入されることになりました。
団体交渉権とは・・・・・・
労働者の賃金や労働条件を維持向上させるため、労働組合が使用者と交渉する権利をいい、団体交渉によって労働協約を締結する権利を労働協約締結権といいます。しかし、地公法は非現業職員に対して団結権を保障しながら、労働協約の締結権を否定して、書面協定の締結権を保障するという複雑な構成となっています。書面協定が労働協約と同一でないのは、「勤務条件条例主義」が存在しているからです。地公法第24条に「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」とされ、公務員の勤務条件等は、議会の議決により条例化しなくてはなりません。しかし、地公法は交渉権を認めていますし、当局との交渉によって合意した結果は、双方とも「誠意と責任をもって履行しなくてはならない」としており、民間労働者と同じように労使間交渉が最大限尊重されなければなりません。もちろん、公企、現業、県立病院機構及び県立療育機構職員には労働協約締結権が保障されています。混合組合の場合は、非現業職員には書面協定の、現業職員には労働協約の効力をもちます。
団体行動権(ストライキ権)とは・・・・・
労働者は自らの労働力を売って賃金を得ているわけですから、一定以下の賃金・労働条件では労働力を売らない自由を持っています。使用者が賃金・労働条件の確保・改善を果たさない場合、労働組合に結集する労働者はストライキという形で一斉に労働の提供を拒否し、その力を背景に団体交渉をすすめます。ストライキを成功させるため、労働組合は事前に全組合員の批准投票を実施し、また様々な宣伝活動も行います。ストライキ権は労働基本権の要といえます。しかし、そのストライキを公務員は禁止されています。
以上のように労働者の基本的人権である労働基本権を著しく制約されている私たち公務員労働者は、ストライキ権回復を最終目標として、「団体交渉による賃金・労働条件決定制度の確立」を目指し、ILO151号条約(公務における団体権の保護及び雇用条件の決定手続きに関する条約)批准と、国内法改正の取り組みを進めています。また、連合では、ILO144号条約(三者構成)をはじめ優先批准ILO条約を決めて、主要条約批准の取り組みを強めています。 151号条約を含め、官民労働者が一体となって、この批准に取り組む意義は大きいものがあります。公務員における労働基本権の確立は、世界の公務員労働運動共通の課題ですから、自治労は、各国公務員労組との運帯・共闘を強めるとともに、ILOの場を含め国際活動を強化しています。